この三月、定年退職を迎えられた佐竹校長(山東23回・志也会・昭和48年卒業)がいつも通りにこやかに挨拶をし始めると、講堂の中に音楽が流れ出した。放送係がミスをしたのかと一瞬ざわついたが、そうではなかった。校長が係の生徒に頼んで、さだまさしの曲を流してもらっていたのだ。さだの歌声が静かに流れる中で、校長は映画「風に立つライオン」の主人公の言葉を引用して、生徒達に別れと励ましの言葉を贈った。そして、職員には、校内の風景を写した四枚の写真に添えて「たいへんお世話になり ありがとうございました」と印字されたシートが贈られた。
それらが単なる離任の言葉ではなかったことに、私達は、今日、気づかされた。弔辞や喪主のご挨拶から、校長は三月まで職務を全うすることを強く願い、その後で治療に専念する道を選ばれていたことを知らされたのだ。覚悟をされた校長先生は、私達に最後に贈る言葉を探して校舎を眺め渡したに違いない。シートに記された言葉の数々。校是「文武両道」「質実剛健」「自学自習」、大蔵大臣結城豊太郎の母校訪問記念の書「Boys! Be Ambitious.」、書道部のパフォーマンス作品。
贈られた言葉が、伝えたかった言葉、遺したかった言葉に変わる。合掌。